2010年10月23日

珊瑚事件ふたたび(その4)

この朝日の「がん治療ワクチン」記事、私は直接的な捏造記事ではない、傷のない珊瑚に傷をつけてさもこんな悪い奴がいるという記事をでっち上げたというではなく、事実の切り貼り、自分の主張に合う事実だけを、つなぎ合わせた(今、検察がよくやっているようなあの手です)、捏造でもいわば間接的なものだと、先のエントリーでは書いた。
しかし、どうも傷のない珊瑚に傷をつけてもいたようです。

この朝日の捏造記事事件、私が思った以上に悪質かもしれない。

まずこの朝日の捏造記事で、東大医研や中村教授以上に直接的な、それも大被害を受けたオンコセラピー・サイエンス社の抗議文(PDF文書)。
http://www.oncotherapy.co.jp/news/20101022_01.pdf
この「第2 掲載記事にねつ造の疑いがあること」の部分を読んで下さい。
私の「珊瑚事件ふたたび(その1)」で朝日の第一報へ「他施設の研究者のコメント(こういうコメントが本当になされたのでしょうか?)」と書いた部分に関係しますが、これが事実としたら傷のない珊瑚にKYと傷をつけたのとちっとも変わらないことになる。完全な捏造記事です。
-----(ここから引用)-----
また、掲載記事には「記者が今年7月、複数のがんを対象にペプチド臨床試験を行っているある大学病院の関係者」に取材した旨の記載がございます。
東京大学医科学研究所で、改めて独自に調査を行い、「複数のがんを対象にペプチド臨床試験を行っている大学病院」に該当するすべての大学病院に問い合わせを行ったところ、今年の7月に記者から取材を受けたのは大阪大学のみということが判明した、と連絡がありました。ところが、大阪大学で取材を受けた関係者は掲載記事に記載されているような回答は全くしておらず、取材をした記者に対して電話で抗議したとのことでした。
-----(引用、終わり)-----

発言を全く違って報道された、彼らに都合の良いように書かれたってことはマスコミの取材を受けた人のほとんどが言っている。
こういうのは彼らの常套手段であり、だからこそマスコミ取材には慎重でないといけないし、可能なら拒否した方が良いと言われている理由でもある。もしどうしても受けざるを得ないにしても録音、録画をしておいてこの手の捏造行為をされた場合には、今やブログというマスコミへの対抗手段があるんだからそういう場を使って公表すべきです。
この大阪大学で取材を受けた関係者もそうすべきで、「電話で抗議」など、彼らマスコミには蛙の面でしかない。
この取材を受けたという「関係者」、脇が甘すぎたと言われても仕方がない。

それにしても「当社株価は一時ストップ安となり、当社の企業価値として約83億円の損失となりました。」となり「貴社の報道で不用意に不安を煽りたてられ、問い合わせが殺到いたしました。患者さん・治験施行施設・医師の対応に忙殺され、小さなベンチャー企業である当社は大変混乱し、業務に甚大な支障がありました。」とのこと。
株価がストップ安になるってことは、この報道で儲けた奴もいる可能性がある。私は仕組みがよく分からないのですが値下がりを見越して空売りしておくとかいう手があるのじゃなかったか。

がん関連二学会の抗議声明というのも出ている。
朝日新聞の記事(10月15・16日)に関して -- がん関連二学会からの抗議声明 --
http://www.jca.gr.jp/public/asahi.html
(日本癌学会のホームページ)
全文引用。
-----(ここから引用)-----
朝日新聞の記事(10月15・16日)に関して
-- がん関連二学会からの抗議声明 --

平成22年10月22日
日本癌学会理事長 野田哲生
日本がん免疫学会理事長 今井浩三

朝日新聞の「臨床試験中のがん治療ワクチン」記事(2010年10月 15日、16日)には、東京大学医科学研究所で開発した「がんワクチン」を用いて同附属病院で行われた臨床試験に関して、大きな事実誤認に基づいて情報をゆがめ、読者を誤った理解へと誘導する内容が掲載されました。

その結果、ワクチン治療を受けておられる全国のがん患者さんに無用なご心配をおかけするとともに、今後の新たながん治療開発に向けた臨床試験に参加を希望される、多くのがん患者の皆様にも、多大なご迷惑をおかけする事態となっております。また、この記事は、がん患者さんに、より有効な治療を提供するべく懸命に努力している医療関係者、研究者、学生の意欲を大きく削ぐものであり、この分野での我が国の進歩に大きなブレーキをかける結果を招きかねません。

より良いがん治療の提供を最大の目的として設立され、活動を続けている学会としては、このような記事を容認することはできません。ここに朝日新聞に対して強く抗議するとともに、速やかな記事の訂正と患者さんや関係者に対する謝罪を含めた釈明を求めます
-----(引用、終わり)-----

癌患者が実際不安にかられたというのは事実のようです。
インターネットを検索したらこんなブログがあった。
http://blogs.yahoo.co.jp/mdsisyoku/27062001.html

あの「41患者団体」の共同声明は、こういうことがあっての抗議声明なのでしょう。
朝日新聞報道に対して41患者団体が共同声明
http://lohasmedical.jp/blog/2010/10/37.php

これを朝日はこう報じている。
いかに新聞というのが自分の都合の良いように曲解するかというのがよく分かる実例。
朝日新聞のサイトに載っていないか探したのですが見つからないので、新聞記事から書き写します。
10月21日朝刊、34面。小さく、よく見ないと見逃す。
-----(ここから引用)-----
がん患者団体「研究適切に」

東大医科研問題で声明

 東京大医科学研究所が、付属病院でのがんペプチドワクチンの臨床試験で膵臓がん患者の被験者に起きた消化管出血を、ペプチドを提供した他施設に知らせていなかった問題で、各地で活動するがん患者会の代表者らが20日、東京都内で記者会見し、新たな治療法や新薬の臨床研究を適切に進めるよう求める声明文を発表した。膵臓がん患者や家族らで作る患者会「パンキャンジャパン」、卵巣癌体験者の会「スマイリー」など41団体が名を連ねた。
 声明文では、(1)根拠とオープンな議論に基づく国のがん研究予算の拡充(2)被験者の十分な保護とともに、情報の広い開示、専門家によるオープンな議論と検証(3)有害事象などの報道では、がん患者を含む一般国民の視点を考え、事実を分かりやすく伝えること--を求めている。
-----(引用、終わり)-----

声明文の一番肝心な部分を、意図してでしょう、省いている。
その一番肝心な部分が、自分への非難だから省いたのだというのが、これほどよく分かる例も珍しい。
その肝心な部分をここに再度あげておきます。
-----(ここから引用)-----
治験や臨床試験では、一定のリスクがあることも忘れてはなりません。がん患者さんが参画する治験や臨床試験において、被験者の保護には十分すぎるほどの配慮が不可欠です。一方で、治験や臨床試験のリスクについては、正しい理解と適切な検証が必要であり、不確かな情報や不十分な検証に基づいて、治験や臨床試験のリスクが評価されるべきではありません。特に、東京大学医科学研究所の臨床研究に関する報道を受けて、当該臨床研究のみならず、他のがん臨床研究の停止という事態が生じました。がん臨床研究の停滞が生じることを強く憂慮します。
-----(引用、終わり)-----

一方で以下の方がこの声明文の肝心な部分なのに、朝日新聞はこれを完全に抜かしている。ここを書かないと、さも患者団体が朝日新聞の応援をしているかのようになって、事実とは逆になってしまう。
非常に巧妙、そして罪深いやりかたと言わざるを得ない。
こんな記事にされては、この抗議声明に名を連ねてもいる、「中医協の傍聴」を諦めてまでMRICに投稿した「スマイリー」代表の片木美穂さんは立つ瀬がないでしょう。

ホント、なんちゅう新聞社だ。
posted by machiisha at 11:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック