善意、実際は偽善でしかないものをテレビ電波で垂れ流す。感動、その実は無理矢理作られた偽物の感動でしかないものを垂れ流す。
私は、こんな番組を見ても不愉快にしかならないので見ないのですが、今回は注目していました。
無介助分娩を感動(偽物の感動)ものでやるというのを、それも出演する家族関係者がmixiで書いていたらしい。テレビ局の方も、そういう内容にすると予告もしていたらしい。
これに対し、ブログが沸騰していたというのが、注目していた理由です。
いつも訪問している助産院は安全?さんとこ、うろうろドクターさんとこ、そして新小児科医のつぶやきさんとこなどで取り上げられていたので、経過も分かっていた。
で、注目していたのですが、見逃した、、、(^^)
NHKの衛星放送のアニメを見ていた、、、
内容は、、、
>「『出産シーン』は一瞬で、
>「安易な自宅での出産は危険を伴います。助産師や医師の立会いを求めるようにしましょう」
>という、テロップも入ってましたが、
という中途半端なものだったようです。
ただ、というかそれ以上にこのテレビ局のアホさ加減が良く出ているというか、、、
>水中出産ですね。
だったそうです。
ヨミウリ系列の妊娠、出産、さらにはこの国の産科事情ということへの無知さ、そして最初にも書いたように偽善、偽感動の押し売り、それで視聴率を取って金儲けさえできたらよいというこの会社の姿勢が良く出ている。
私が、この無介助出産放送ということで感じていたものは、無謀登山と同じ、いやそれ以上のモラルの無さへの嫌悪感です。そして、そういうものを人々が感動するだろうと予想するテレビ局の人間への反吐が出るような嫌悪感です。
登山での事故、それも救急隊を呼ばないといけないような重大事故はどれほどの率なんでしょう?
出産で危険なことが起こる確率は250分の1、つまり250回に1回は産婦や胎児、新生児に危険なことが起こる(という統計が出ている)。登山の事故確率はこれよりはるかに低いはずです(今の周産期リスクの低さ、ほとんど人が妊娠出産が安全だと思い違いをしているようになっているのは、以前にも書いたように、産科医たちの血のにじむような努力のおかげなのです)。
この前、救助隊のヘリコプターが墜落し何人か死亡した事件があった。ご丁寧にマスコミ関係者の中にも、この事件での無謀取材で死亡した例さえあった。
ヘリコプター出動などという例は、いわば高度周産期センターでの大手術、そして新生児もNICU直行というようなものに当たるでしょう。
で、そういう登山(出産)を、無計画(既に8人も子どもいる)に、ガイド(産科医)もつけず、登山にど素人が、知っているつもりになって、軽装で事故が起こった時の備えを何もせず(助産師さえつけず)にやったとしたら、、、
そして、テレビ局が、登山中のライブ中継をはさみながら、時に芸人にインタビューさせ、山の風景はすばらしいとか登山の苦労、そして達成した時の感動を、大げさにあおり立てるとしたら、、、
そういう登山は、たとえ無事に帰ってきたとしても非難されて当然のはずです。そして、そういう番組を制作し放送したテレビ局も。
ましてや、それで事故が起こり、救助隊が出動したりしたら。
自分たちは山で死ぬのは本望だと、救助を要請しなかっても、周りはほっとくわけにはいきません。
救助に出動せざるをえない。
救助のリソースは無限ではありません。
きちんと登山に備え、ベテランガイドをつけて登山して、突然の天候以上で助けを必要としたような人への救助ができなくなる可能性もある。時にはあのヘリコプター事故のように二重遭難、二次事故ということもあり得る。
これと同じことが、この無介助分娩という、無知で、無謀なことにも起こり得るのですし、既に起こってもいると思います。
こういうお馬鹿な連中はどこにでもいる。カルト教団の信者や、今話題のホメオパシーの信者も同様でしょう、いつまでも無くなることはない。
しかし、それを感動もの、善意ものという形で放送するテレビ局は、絶対に許してはいけない。
それにしても水中出産とは。
この家族、どこまでのドアホなんだろう。
自然教も極まれりなんでしょうけど、我々は陸上生物だぞ。
水中で出産なんて不自然極まる!