2010年04月18日

メスが元型ではなかった!?

まぁ、この読売オンラインの記事を読んでみて下さい。
タイトルだけ読むと、それも前半だけ読むと、今までの常識を覆すようなすごい発見がなされたと思ってしまう。
でも、タイトルの後半を読むと、え?、それっておかしいのじゃないの、逆じゃないのとなってしまう。
で、記事を読むと、確かにタイトル前半が正しく、後半の方は、読売のこのタイトルを書いた者が大間違いをしてだけなのだというのが分かる。

「雌が先」説覆す…雄特有「侠気」遺伝子発見
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100417-OYT1T00812.htm
-----(ここから引用)-----
 「生物はもともと雌が基本で、雄は進化の過程で雌が変化して生まれた」とする従来の説を覆す証拠を、日米の共同研究チームが突き止め、米科学誌サイエンスで発表した。

 ごく初期の生物で、すでに雄と雌それぞれに特有の遺伝子が複数存在していた。

 野崎久義・東京大学准教授らは4年前、雌雄を区別できる最も原始的な生物である緑藻「ボルボックス」の雄株から、精子に似たたんぱく質を作る雄特有の遺伝子OTOKOGI(侠気(おとこぎ))を発見した。この時、雌株からは雄雌共通の遺伝子しか見つからなかったため、「雌が基本でそこに新しい機能が加わって雄になった」という従来の説が正しいと考えられた。

 しかし今回、雄雌両方の株の遺伝情報すべてを解読した結果、雌特有の遺伝子5個を発見、HIBOTAN(緋牡丹(ひぼたん))遺伝子群と命名した。さらに雄だけの遺伝子も新たに9個見つかった。

 「緋牡丹」の名は、野崎さんが大ファンだという女優・富司純子さん主演の映画名から。野崎さんは「高等動物は成長過程で雌雄が変化するクロダイのような種もいてわかりにくいが、性の起源までさかのぼると、雄雌は根本的に違う進化をたどったことがわかる」と話している。
(2010年4月18日00時07分 読売新聞)
-----(引用、終わり)-----

あえて、最後の「(2010年4月18日00時07分 読売新聞)」までつけておきます。
たぶん、タイトルが、そのうち変更されると思う。されなかったら、読売はアホだ。いや、変更されてもアホを晒しているというのは残るかな。
タイトルはこうすべきものだったのでしょう。
「雌が先」説覆す…雌特有「緋牡丹」遺伝子発見

日経新聞の方は正しくタイトルをつけている。
「メスらしさ」決める遺伝子を特定、東大などの研究グループ
(日経は、インターネットの自由を認めない立場にあるようで、引用したり、直接リンクすると訴訟を起こす、賠償を求めると脅しをかけているので、タイトルだけにしておきます)

一番大元の東大のサイトにリンク
ゲノム解読がはじめて明かすメスとオスへの進化
メスらしさのはじまり“HIBOTAN ”遺伝子群の発見

http://www.s.u-tokyo.ac.jp/press/press-2010-16.html
-----(ここから引用)-----
発表概要

“メスらしさ”と“オスらしさ”が原始の性(sex)からどのように進化したかはこれまで明らかでなかった。今回、ボルボックス(図1・ 2)のゲノム解読から、メスまたはオスだけがもつ複数の遺伝子群を明らかにした。特にメス特異的 “HIBOTAN ” 遺伝子群の発見は、メスが”性の原型”から進化するためにメスらしさをもたらす新たな遺伝子の獲得が必要であったことを強く示唆した。
(中略)
(4)この研究で得られた結果、知見

解読されたボルボックスの性染色体領域はメスとオスのそれぞれで1.0Mb(百万塩基対)を超える大きさであり、同型配偶のクラミドモナスの性染色体領域(0.2-0.3Mb)の約5倍に拡大していることが明らかとなった。オスの性染色体領域には “OTOKOG I”等のオス特異的遺伝子が10 個、メスの領域にはメス特異的遺伝子が5 個解読された(図4)。特に5個のメス特異的 “HIBOTAN ”遺伝子群すべてが同型配偶のクラミドモナスでは認められないもので、これらの遺伝子の獲得が同型配偶のプラス交配型からメスに進化する直接的な原因となったことが推測された。従って、メスは単なる性の原型ではなく、メスへの進化には、メスらしさをもたらす遺伝子群の新たなる獲得が必要であったことが示唆される。一方、オス特異的遺伝子10個中の8個がクラミドモナスでは認められない遺伝子であり、精子を形成するオスに進化するために獲得されたことが推測される(図4)。

また、ボルボックスのメスとオスの性染色体領域に共通して存在する遺伝子の中に、両性で配列が著しく異なるものが認められた。特に細胞分裂に関係するヒトの網膜芽細胞腫のガン抑制遺伝子と相同のMAT3 遺伝子がボルボックスのオスでは遺伝子構造や発現がクラミドモナスのものと著しく異なり、細胞分裂して小さな精子を形成するというオスらしさを進化させた原因の遺伝子群のひとつであると推測された。

以上のようにプラス・マイナスの同型配偶からメスとオスの卵生殖に至る進化のゲノムレベルの基盤は両性の遺伝子が組み替えしない性染色体領域に存在する。また、性染色体領域の拡大とこの領域に局在する遺伝子の両性での特異化および性特異的遺伝子の新たなる獲得がメスとオスへの進化に直接影響したことが強く示唆された(図4)。
-----(引用、終わり)-----

オスとメスの元型があり、そこにメスになるための遺伝子(緋牡丹)が働くことでメスになり、オスになるための遺伝子(侠気)が働いてオスとなる。
そんなイメージなのかな。
-----(ここから引用)-----
これまでの我々の系統学的研究によると群体性ボルボックス目でメスとオスが進化したのはヤマギシエラと ユードリナの分岐の間であり(図3)、この両者の両性(交配型プラスとマイナス、メスとオス)の性染色体領域のピンポイント的ゲノム比較を実施することで、メスとオスの進化のより直接の原因となった遺伝子をあぶり出すことが可能になると思われる。
-----(引用、終わり)-----
ラベル:マスコミ 科学
posted by machiisha at 11:59| Comment(1) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やはり、タイトルが変わった。
読売のリンク先のタイトル、こうなった。
「生物の雌雄は最初から、「雌が先」覆す発見」
Posted by 院長 at 2010年04月18日 18:41
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