医療事故が起こった。
これはまさに「事故」です(今も話題のあの東京の妊婦搬送問題は事故ではない、事件でさえない)。
単純なミスによって起こった事故であり、それが人の死という重大な結果を引き起こした。
そして、この日本では例によって警察が介入し、事件として処理され、個人を処罰し、その結果としてまた同じような「事故」がこれからも起こり続けるのでしょう。
まずこの共同配信から。
例によって、意味不明な記事です。
http://www.47news.jp/CN/200811/CN2008111901000898.html
筋弛緩剤誤投与で入院患者死亡 徳島の病院、70代男性
-----(ここから引用)-----
徳島県鳴門市の健康保険鳴門病院は19日、医師が解熱剤と間違えて処方した筋弛緩剤を、看護師が70代の男性患者に投与し、患者が死亡したと発表した。
病院によると、患者は肺炎と胸膜炎で入院していた。筋弛緩剤を誤投与されたのは17日夜で、容体が急変し患者は18日午前1時45分に死亡した。薬品名が解熱剤と似ていたという。
病院のホームページによると、全国社会保険協会連合会が運営する総合病院で、内科、外科、脳神経外科などの診療科があり、約300の病床を備えている。
-----(引用、終わり)-----
筋弛緩剤を解熱剤と間違って投与された?
さっぱり理解できない。
この後の記事では、筋弛緩剤がサクシンで解熱剤はサクシゾンとなっていた。
サクシゾンってのは、副腎皮質ホルモン剤であって解熱剤なんかではないぞ!
他の記事では抗炎剤となっているのもあった。
まぁ、炎症を抑える薬であるのは間違いないが、普通、抗炎剤と言われたらNSAIDsを連想してしまう。非ステロイドの抗炎症剤です。
問題は、どうして解熱させようとして副腎皮質ホルモン剤を使おうとしたのかです。
地元紙が詳しい。
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2008/11/2008_122714390659.html
筋弛緩剤誤投与で患者死亡 健保鳴門病院、解熱剤と取り違え
-----(ここから引用)-----
患者は、肺炎と胸膜炎で十月末ごろ入院。近く退院予定だったが、十七日午後九時ごろ三九度の熱が出た。看護師から連絡を受けた同当直医がパソコンで薬を処方。その際、普段使わない解熱効果のある副腎皮質ホルモン剤「サクシゾン」を検索しようとキーワード「サクシ」と入力。画面に一つだけ表示された筋弛緩剤「サクシン」を選び二百ミリグラムを出力した。女性看護師が点滴した。
患者はぜんそくの症状があり、通常の解熱剤を使えなかったという。筋弛緩剤は通常、手術以外に使用するケースはほとんどない劇物。二百ミリグラムは一気に点滴すると死に至る可能性が高いという。
-----(引用、終わり)-----
普通のNSAIDsでは喘息を誘発する可能性が高いと考えて、まず副腎皮質ホルモン剤を投与してから解熱剤を使おうと考えたのでしょうか?
これはあり得る。
で、この記事によると「病院は十八日に遺族にミスを認め、謝罪するとともに警察にも届け出た。」、そして「鳴門署は「届け出を受け捜査中」としている。」そうです。
また、警察が、医療にど素人の警察が、介入する。
こういう単純ミスは個人の刑事責任を追求するようなことをしていては減らない。
これは、既に確かめられている。
(無くすことは、絶対に不可能です)
人は、間違える動物なんです。
人が間違えても(ミスしても)、事故にならないように、重大な事故になっていかないようにシステムを改良すべきなのです。
この例では、サクシンとサクシゾンという名前のよく似た薬を置いておかないこと。
しかし、この対処はすでにこの病院ではなされていた。
が、事故は起こってしまった。
-----(ここから引用)-----
病院では五年ほど前から、サクシゾンを使用していなかった。当直医は今年四月ごろに別の病院から移ってきたばかり。「当直医はサクシゾンが院内にないことを知らなかったのか」との報道陣の質問に、「詳しいことは警察の捜査中なので分からない」と繰り返す増田院長。薬を取り違えた原因については「複雑な治療と違い、単純なミスほど予防しにくいもの」と釈明した。
-----(引用、終わり)-----
こういう名前のよく似た薬を間違えたという例は多いのです。
中には重大な事故になったこともある。
そのためこのようにすべきだという提言もなされている。
http://wwwhakusyo.mhlw.go.jp/wpdocs/hpax200401/b0075.html
http://medical.radionikkei.jp/suzuken/final/031218html/index.html
しかし、こういう提言を守ってもミスは繰り返されるし、中には重大な事故にまで至ってしまうこともある。
医師がミスしても、看護師や薬剤師が防げるようなシステムにすることや(これも既になされている)、さらには、筋弛緩剤のような薬を病棟で使えないようにすることまで考えてもよいかもしれない(医療行為の障害になるかもしれないけど、ここまでやるべきかもしれない)。その他、人は間違えるものだという前提に立って、二重、三重、四重、それ以上のフェールセーフシステムを作るべきなのです。
とにかく病院長が「詳しいことは警察の捜査中なので分からない」と言わざるを得ないような社会は間違っている。
それと、この30代の女性医師は再教育すべきでしょう、これは確かです。また、「当直医がこの三カ月間、休日も出勤するなどほとんど休みがなかった」というような過重労働もなんとかしないといけない。
こういう真相解明、事故防止ということに、警察の介入は何の意味もないし、逆に妨げとなる。
たぶん、これからも同じような事故が起こり続けることでしょう、この日本では。
2008年11月20日
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