2008年11月01日

メトホルミンとチアゾリジン系薬

経口糖尿病薬は、本当に糖尿病患者の生命予後、健康予後に役立っているのかという問題。
急性疾病なら、飲ませばその効果を実感できるし、客観的な研究データを得やすいから結論もクリアカットに出る。ところが、慢性疾患はそれが困難です。
高血圧症で降圧剤を服用し、血圧を下げて、それで5年先、10年先の実際の死亡率は減っているのか?
高コレステロール血症など高脂血症でコレステロール、LDL-Cなどを下げて、それで5年先、10年先の脳梗塞や心筋梗塞の発症を防げているのか?
死亡率や発症率が実際減るとしても、その減少率はどれほどなのか?
1000人の対象患者のうち、何もしないと5年先に10人が死んだり発症したりする、それが治療すると9人になるとしたら、あなたは治療をしますかという問題。その程度なら、しないという人は多いと思う。では、8人になるとしたらどうか、5人ならどうか?

糖尿病でも同じです。
特に、逆に、死亡率が増えたりするなら、治療しない方が良いのは明かです。
血糖を下げても服用による副作用で死亡率が増えたりするものなら、そんな薬は使わない方が良い。
しかし、メリットにしろ、デメリットしろ、慢性疾患を対象とした場合には、その証明が難しい。何万人という人を対象として、5年、10年という期間がかかる。

メトホルミンは経口抗糖尿病薬の中で心血管リスク抑制効果が最も高いことを示すメタアナリシス結果
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=82336
-----(ここから引用)-----
広く処方されているメトホルミンは、心血管リスクへの有意な作用をもつ唯一の経口抗糖尿病薬であることを示すメタアナリシス(選択した比較対照臨床試験40件が対象)の結果が『Archives of Internal Medicine』2008年10月27日号に報告された[1]。メトホルミンは、他のあらゆる抗糖尿病薬またはプラセボに比べて心血管疾患による死亡を 26%減少させたが、原因を問わない死亡率への影響はみられなかった。

ロシグリタゾンはリスクを高める可能性が示された唯一の経口抗糖尿病薬であり、評価対象のすべてのエンドポイントでその傾向が認められたが、いずれも有意性はなかった。
-----(引用、終わり)-----

メトホルミンは、日本ではSU剤が効果不十分や副作用で使えない場合に限るという但し書きが効能書きに書かれています。
これは「重篤な乳酸アシドーシスを起こすことがある」、実際にそういう副作用が起こったことがあるということで、厚労省が膾を吹いているためでしょう。糖尿病専門医は、第一選択薬として推奨もしているようです。

ロシグリタゾンは日本では未承認のよう。
この手のインスリン抵抗改善薬は、日本では武田のピオグリタゾン(アクトス)が使われている。以前、ノスカール(トログリタゾン)というのは発売されていたが、肝障害が出るとかいうので、今はあまり使われていない(のかな、当院も出始めた時期、置いていたことがあるのですが、今はない)。
そして、このタイプの薬は、以前より心血管系への副作用があるというのが言われていた。

メトホルミンは復権させるべきなんでしょうが、厚労省はいつまで膾を吹いているつもりなんだろう、、、
ラベル:健康 独り言 医療
posted by machiisha at 11:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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