2007年04月24日

トリアージ NHKスペシャル

昨夜、4月23日のNHKスペシャルは2年前の尼崎列車事故におけるトリアージを取り上げていました。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/070423.html
トリアージ 救命の優先順位
~JR福知山線事故から2年~


私は、残念ながら全てを見れなかったのですが、内容的にはすばらしいものでした。良かったところだけでなく、問題点も掘り下げて取り上げていた。特に、問題点の取り上げかたが良かった。民放のこういうものでは、それがただ情緒的なだけ、弱者ずらした被害者を自称する者をお涙ちょうだいという形で持ち上げるようなものばかりですが、この番組では違った。
私がトリアージで一番懸念しているのが、トリアージを行った者(医師や看護師、救急救命士など)が、トリアージされた者やその関係者に訴えられたり、理不尽な攻撃を受けたりしなだろうかということです。こういうことは医療現場では日常茶飯事ですので。
番組の最後の方で、黒タッグをつけられ死亡とされた人の父親という人が出てきて、トリアージを行ったかもしれない医師に会いに行く場面もあったのですが、そこでもよく抑制された冷静な番組作りが行われていたと感じました。

トリアージとは、現場で重症度の判定を行うことです。
http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/fukusisomu/iryotaisei/triage.htm
-----(ここから引用)-----
2 トリアージの必要性
  一度に多数発生する傷病者に対して、医療スタッフや医薬品等限られた診療機能を最大限に活用して治療を行うため、医療機関等では、診療前にまずトリアージが行なわれます。
 災害時の混乱している中で、トリアージを行わず通常と同じように受付け順で治療を行った場合、重症者が長時間放置されるということが出てきますし、また、最重症者から治療を始めた場合には、その治療だけで貴重な医療スタッフ、医薬品等が使われてしまい、確実に救命可能なほかの重症者の治療ができなくなるといったことも考えられます。
  こうした問題を解決し、傷病者の救命や治療を最大限効率的、効果的に行うためトリアージが必要となります。
  救命の可能性が非常に低い者よりも、可能性の高い者から順に救護、搬送、治療にあたるべきであるという考え方です。
-----(引用)-----

トリアージには黒(死亡群)、赤(最優先治療群)、黄(待期的治療群)、緑(軽症)の4区分があり、それを迅速に(1分、遅くても2分)、それも器具も何も無しに行わないといけない。そして、正確でないといけない。赤なのに黒と判定されたりしないか、赤なのに、黄や緑に分類され、長時間現場で放置され、ついには死亡させたりしてはいけない。
トリアージされる側の懸念も、たぶん同じと思います。自分は黄と判定された、赤の人が他にいるのなら、この苦しさ、痛さはがまんしようと思ってくれるのも、その判定の正確さへの信頼があってのこそです。
また、上で取り上げた、黒タッグをつけられ死亡とされた遺族の方の無念さも、実はここにあるのだと推測します。黒タッグを付けられたけど、実は赤だったのではないか、黒タッグをつけられたのはミスだったのではないかという疑念です。私は、これがトリアージ判定者への攻撃に替わらないか懸念しています。
私がこの番組で感じた一番の問題点はこれでした。

以下は、枝葉末節、、、
私が、あの尼崎のような現場にして、実際どれほどできるか、番組でもトリアージ訓練の場面が放送されていましたが、私がやってもトリアージがうまくできなかったチームのようなことになる可能性が高い、そう思いました。
これは、訓練するしかない。
ただ、私ら開業医にその訓練の場も、そして一番の問題はその時間がないことです。
実際問題として、私らにできることは、緑タッグをつけられた人たちを受け入れることと治療くらいでしょう。

それと、現場における指揮命令系統の問題です。
消防隊や警察は隊長がいて、そのかたたちが全体の把握して部下達を動かしているのでしょうが、医療チームはそうではない。特に、現場に複数のチームが入ったりしたらばらばらに動くことになります。複数のチームが入っても、そこで一番上のリーダーを決めて、そこに情報を集約させ、その人の命令で、たとえ病院が違っても、動くようにしないといけない。また、そのリーダーが、消防隊や警察、さらには自衛隊のリーダーと連携し、情報のやりとりをすようにしないといけない。
消防隊や警察、自衛隊では身分がきちんと決められているから、すぐ誰をリーダーにするかというのは決められるでしょうが、問題は医療チームです。
最初に入ったチームのリーダーを全体のリーダーにするか、、、
posted by machiisha at 09:51| Comment(1) | TrackBack(0) | 未分類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トリアージの実際
http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/triage.pdf
(阪大救急部のサイトか?)
Posted by 院長 at 2007年04月24日 10:08
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