高齢者の転倒予防戦略

エビデンスに基づく高齢期の転倒予防戦略
鈴木 隆雄
日整会誌 80:209-216 2006

高齢者が転倒し、大腿骨頚部骨折や脊椎圧迫骨折を起こし、これを契機に寝たきりになってしまうということはよくあることです。そのため、転倒予防が重要なのですが、ではどうすればいいのか、運動訓練や装具などいろいろ提唱されているが、それが実際に転倒予防に役立っているのか、そのエビデンスはあるのか。
この論文はその解説を行ったものですが、その中で私が特に興味深いと思ったものを抜き出してみます。

転倒の危険因子
 1)転倒の既往
 2)歩行能力の低下
 3)服用薬剤
この中で、特に1)の転倒の既往が重要で、「一度転倒を経験した高齢者は必ず転倒を起こすと考えてよい」とさえ言えるそうです。
2)はまぁ当然でしょう。3)の中ではトリアゾラム(眠剤)や痴呆治療薬であるアリセプトが副作用として明示されている薬。鎮静剤、睡眠剤、抗うつ剤、抗精神薬などはバランス障害を起こし、転倒の危険性を高める。

転倒予防の介入方法
 1)運動介入(筋力増強訓練、バランス訓練、歩行訓練、柔軟体操など)
 2)運動以外の介入(服薬指導、食事指導、環境準備など)
 3)多角的介入(運動・運動以外の介入を含む、身体・知的機能、環境、医学的評価に基づいた対策)

1)については、バランス訓練が一番予防効果が高く(25%の改善)、筋力強化や持久的酸素運動などはほとんど効果がなかった。

転倒予防の介入は施設高齢者では明確な効果が確認されていない。これは地域在宅高齢者に比べてより虚弱化が進行していることや、転倒の危険因子となる慢性疾患が背景にあるためだろう。

最近になって、骨格筋の萎縮や筋力の低下に関わるビタミンDが不足すると、転倒しやすくなることが報告されてきた。ビタミンD投与群では非投与の対照群に比べて転倒発生率が2割減少する。

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